僕は「患者様」とは言わない。 三重県伊勢市小俣町耳鼻科病院やのはらクリニック

みなさんこんにちは。「耳鼻咽喉科やのはらクリニック」院長の矢野原元です。
突然ですが、みなさんは『患者様』という呼び方をどう思いますか?
結論からいうと、僕は大嫌いです。難しいことは抜きに、『患者様』と聞くと、なぜか偽善を感じ鳥肌がたつほど嫌いです。僕は『患者様』とは言いません。
と言っても、研修医1年目は『患者様』と呼んでいました。研修医1年目は、創の縫合もうまくできない、点滴をするにも注射針を血管に挿入できず、患者さんに何度も痛い思いをさせることもよくありました。ある患者さんに、「先生、俺の手使って練習していいよ」と言っていただいたこともあります(大学病院などで研修していると、たまにこのような若い医師に対して優しい患者さんに出会います)。上級医がいなければ、何も自分で判断できず、本当に自分が患者さんの力になっているのか?不安になる時期もありました。本当に医師としての能力に自信がもてず、患者さんに申しわけなく『接遇ぐらいは…呼び方くらいは丁寧に…』『せめて僕は患者さんを大事にあつかいますよ…』とアピールする感じで『患者様』と言っていたように感じます。つまり医師としての自信がないためにそのように呼んでいたと思います。
そもそも医療現場における「○○様」という呼び方は、(平成13年 厚生労働省)「国立病院・療養所における医療サービスの質の向上に関する指針」の中の「患者との接偶態度や言葉使いの改善」の項目で、『患者の呼称の際、原則として姓名に「さま」を付することが望ましい』という通達があり、全国的に広まったとされています。そもそも「患者」という名称は「患った者」という意味であるため、この言葉に尊敬語である「様」をつけるのは日本語として問題があるなどの意見もあり、患者様と呼ぶ医療機関は減ってきているようです。
医療もサービスの一種で、患者さんはお客様という考えが広まっているのかもしれません。実際、僕も開業医になってサービス業だなと感じることが多くなりました。しかし、やはり百貨店で売っている服やバックと、医療は同じ商品ではないと思いたいです。百貨店では、お客さんは自由に商品を選べます。一方、病院では患者さんは全く勝手には医療を選べません。知識を持った我々が十分に説明し、その中から選択するわけです。そのため我々は常に勉強する必要があります。
言うまでも無く、我々医療者従事者は、患者さんにやさしく、誠意をもって医療行為を行うことは当たりまえです。本来、呼び方なんてどうでもいいはずなんです。
僕は『患者様』とは言いません。患者さんと言います。
今年もスギ花粉の季節がやってきます。この時期は多くの患者さんに来院いただきます。ピーク時はサービスの面では、みなさんに迷惑をかけることもあると思います。スタッフと力を合わせ、少しでも患者さんの待ち時間の軽減や、気持ちよく受診いただけるように努力します。