総合病院の勤務医の先生方に感謝を(三重県伊勢市耳鼻科病院やのはらクリニック)

みなさんこんにちは。耳鼻咽喉科やのはらクリニック院長の矢野原元です。今年も残すところ約1週間になりました。連日、インフルエンザの患者さんが多く受診されます。ぜひ年末年始を家族や友人たちと楽しく過ごせるように体調管理をよろしくお願いします。そのためには、手洗いやうがい、咳エチケットなど基本的な感染症対策しかないと思います。←医師でなくても書けそうな文章になってしまい恥ずかしいですね(笑)
さて、僕は今年も様々な方々にお世話になりました。クリニックのスタッフ、患者さん、近隣の先生方、税理士や労務士の先生方、補聴器屋さん、医療機器メーカー、友人など。こんな小さな耳鼻科クリニックでも、様々な職種の方々に支えられて運営できています。本当に感謝しています。
とりわけ感謝してもしきれない、絶対に足をむけては寝られない方々がいます。それは総合病院の先生方です。僕の場合は特に伊勢赤十字病院の耳鼻科の先生方です。

今年もたくさんの患者さんを伊勢赤十字病院耳鼻科に送って診察していただきました。上気道の感染症で気道閉塞になりそうな患者さん。癌を疑う患者さん。手術が必要な患者さん。クリニックでは対応できない患者さんがたくさん来院されます。
いつも紹介状を書いているときに、ふと考えます。 もし大学病院や地域の基幹病院に勤務医の先生がいなくなったら。もし、この患者さんを紹介する伊勢赤十字病院や市立伊勢総合病院がなくなったら。
開業医になって数年。スタッフにも恵まれ、順調にクリニックを運営させていただいています。開業医としては比較的遅くまで働いているほうだとは思いますが、 夕診が終わると必ず家に帰ることができ、必ず自分のベッドで寝ることができます。日曜日は必ず休みをもらっています。しかし、その一方で、僕が夜に休めているのは、夜通し救急車を受け入れ、救急患者やがん患者を診察してくれる勤務医の先生方がいるからです。 『ご高診お願いします』と紹介状を託せる先があることがどれほど心強いことか、本当に感謝しかありません。
みなさんも、勤務医の労働の過酷さを聞いたことがあると思います。もちろん僕も経験してきたのですが、最大のつらさはオンオフがはっきりしないことだと思います。 勤務医にとっては勤務時間という概念がありません。外来が終われば病棟へ、病棟が終われば緊急手術へ。ようやく椅子に座れたと思えば、残酷にもPHSが鳴り響く。患者さんがいる以上終わりません。やっと家に帰ったと思ったら、入院患者さんの急変で呼び出される。皆さんの見るドラマのような華やかな世界はありません。まさに昼と夜の境界が全くなく、曜日感覚さえ失われるほどの連続勤務が普通なのです。僕も後輩医師と手術後に銭湯によって帰ることが好きでしたが、10分ごとに携帯がなっていないか湯舟をでて、ロッカーにチェックしにいくような生活でした(笑)
みなさんの家族が入院した時、深夜に呼吸が苦しくなり血中酸素濃度が下がったとします。どこからともなく医師が駆けつけてきます。または深夜に子供の調子が悪くなり、総合病院の救急外来に受診したとします。そこには若い先生たちが一生懸命時間外対応をしてくれています。その先生達はきっと、その日の朝から働いています。そして、翌日もきっと働くのです。その医師にとって、患者さんはあなたの家族だけではありません。皆さんの家族にとっては、入院や時間外受診は非日常でも、その先生にとっては日常なんです。
みなさん、ぜひ『先生おそくまでご苦労様。ありがとう。』と言っていただきたいです。おそらくその一言だけで、かなりの先生方は救われます。決してあたりまえだと思わないでください。その先生方はお金のために働いていません(総合病院の当直報酬はとても少ないです)。
現在、楽して(当直や時間外救急対応なし)お金を稼ぎたいという若手医師が多くなっていると聞きます。そんな時代でも総合病院の勤務医の先生方が病院を離れないのは、医学を勉強したい、目の前の患者を救いたいという、使命感があるからだと思います。世界に誇る日本の医療は、彼らの『善意』によって、かろうじて持ちこたえています。彼らが『もう無理!』となったとき、我々は癌になっても….
この一年、みなさんは誰に感謝をされますでしょうか?ご両親でしょうか?友達?上司?警察?消防隊?自衛隊?

我々が楽しい年末年始を過ごしている間、急病があっても助けられるように、総合病院では多くの若手医師が当直してくれています。また多くのベテラン医師も呼び出されたら駆けつけられるように待機してくれてます。彼らは我々に何かあってもきっと助けてくれます。みなさんも、総合病院の先生方に感謝を伝えていただきますようよろしくお願いします。
みなさん今年もありがとうございました。来年も、総合病院の医師にはかなわないですが、耳鼻咽喉科医師として社会に貢献できるように努力します。では、よいお年をお迎えください。