舌下免疫療法について(三重県伊勢市小俣町の耳鼻科病院やのはらクリニック)

みなさんこんにちは。耳鼻咽喉科やのはらクリニックの院長の矢野原元です。
3月と4月は花粉症の患者さんが多くなり、耳鼻科医にとって最も忙しい時期でした。特に今年はたくさんの患者さんに来院いただき、待ち時間などでご迷惑をおかけしたと思います。申し訳ありませんでした。僕自身も患者さんと話しすぎて、声が悪くなるのはいつものことですが、今年は腰を痛め坐骨神経痛で歩行困難まで経験しました。耳鼻科医は処置したり、立ったり座ったり、赤ちゃんの患者さんがきてしゃがんだと思ったら、高身長の男性が来て背伸びしたり、カルテ書いたりで意外に腰にくるんです(笑)数年ぶりに自分が患者になり、当院の近くの森田整形外科を受診することになりました。森田先生には腰椎ヘルニア疑いの診断と、投薬と指導いただき今は改善傾向です。
歩行困難になったときは、本当に明日の仕事ができるのか?OPEになったらクリニックどうする?本当に治るの?と不安になり、『森田先生なんとかしてください』との気持ちで受診しました。森田先生がレントゲンみて『そんなにひどくなくて、たぶん手術はいらないと思う』と言われたときはものすごく安心しました。専門医に大丈夫と言っていただくと、たぶんその時点で8割治った感じがしました(笑)
耳鼻科でも高熱がでている患者さんや、かぜで声がでない患者さん、癌を心配している患者さんなどは、このように祈るような気持ちで受診してくるんだろうなとわかり、あらためて身の引き締まる思いです。今後も、できるだけ患者さんを安心させられるような診察を心掛けていきます。そう考えると、今回腰を痛めて他院を受診したことも無駄ではなかったと思えます。
話がそれましたが、とにかく今年も花粉症の患者さんが多かったです。そこで、今回取り上げたいのが「舌下免疫療法」です。(以前も一回ブログで取り上げておりコピー部分もあります。)
アレルギー性鼻炎(含花粉症)は、アレルゲン(または抗原)と呼ばれる原因物質(ダニ、スギ花粉など)によって引き起こされます。舌下免疫療法とは、その患者さんのアレルギーの原因となっているアレルゲンを、少量から徐々に量を増やし繰り返し投与することにより、体をアレルゲンに慣らし、症状を和らげる治療法です。根本的な体質改善(長期寛解・治癒)も期待されます。舌下免疫療法は、アレルゲンを舌の下(舌下)に投与する治療法で、現在、スギ花粉症およびダニアレルギー性鼻炎に対して行われています。
簡単に言うと、アレルギーの原因物質(スギかダニ)を少しづつ長期(約3-5年、当院では4年と説明)に体内に吸収させることで、慣れさせる治療法です。
①アレルギー検査を未施行の患者さんは、これ以前にアレルギー検査が必要です。基本的に、前の別日にお願いします。
➁僕(医師)から説明、シダキュア2000を処方
③隣の薬局からシダキュア2000をもらってくる。
➃僕(医師)の前で初回内服。30分当院の待合で待機。30分後、僕が確認し帰宅。
➄1週間後、再診で問題なくばシダキュア5000を処方。その後、約4年継続。
☆適応患者さんは
①一般的に5歳以上(舌下錠を毎日服用できる年齢)でスギ花粉症またはダニアレルギーの診断が確定している患者さん。
➁花粉症の時期に内服薬や点鼻薬などで症状を十分にコントロールできない患者さん
③内服の減量を望む患者さん。
➃薬物療法で望ましくない副作用が現れる患者さん
個人的に良い適応と思うのは、
①これから数年後の春に入試などの大事なイベントを控える子供たち。
➁今後妊娠の可能性があり、内服がしにくい女性。
③あまり、こういう場所でかくべきではないが、医療補助がでて医療負担が無い子供たち(←今後大人になって花粉症で医療費負担が大きくなることを考えれば、子供の時に花粉症を完治させておくことが、医療財政的にもよい可能性あります。)
➃既存の対症療法(抗ヒスタミン薬や点鼻薬など)で十分効果が得られない、または強い副作用がでる患者さん。
☆最も大事な有効性ですが。
一般的に舌下免疫療法を含むアレルゲン免疫療法では、8割前後の患者さんで有効性が認められています。スギ花粉症およびダニアレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法においても、種々の報告からその有効性・安全性が確認されています。(以上、スギ花粉症におけるアレルゲン免疫療法の手引きより)僕の耳鼻科医としての臨床現場での印象は、かなり効果がある印象です。
☆デメリットもあげさせていただきます。
①治療には3-5年間毎日服用しなければいけません。1か月に一回の受診も必要です。
➁20%の方に効果がないとの報告もあります。
③理論上はアナフィラキシーなどの重大な副作用が起きる可能性があります。今のところ、当院で重大な副作用が起きた患者さんはいません。
☆今年の花粉症で本当につらかった患者さん、舌下免疫療法に興味をもった患者さん、花粉症重症の子供をもつ親御さんは、診察中に僕に質問していただければ、詳しく説明します。花粉が飛ばない6-12月に導入することが可能です。
現在スギ舌下免疫療法の薬(シダキュア)のメーカーから出荷制限の通達がきております。舌下免疫療法を希望される人が多く安定供給が困難とのことで、毎月数個導入量の薬が隣の薬局に入る予定です(すでに導入され、維持量の患者さんは問題ありません)。導入薬が少ない現状では、当院も希望された順番で案内している状況です。まずは受診いただき(アレルギー検査未施行の方は、先に検査をしなければいけません)、その時に現状を説明させていただきます。
※舌下免疫療法導入前に採血でのスギアレルギーであることの証明が必要です。過去でも、他院のでも、アレルギー検査のデータがある方はそれで問題ありません。かならず持参ください。