おすすめ本➀   (三重県伊勢市小俣町の耳鼻科病院)

こんにちは。耳鼻咽喉科やのはらクリニック院長の矢野原 元です。

早速ですが、みなさんは『EBM』という言葉を知っていますか?『Evidence-Based Medicine』の略ですが、日本語に訳すと『根拠に基づく医療』となります。簡単に言うと、科学的根拠のある情報(知識)を踏まえて、最善の方法で患者さんを治療するということです。
なにを当たり前のことを言っているかと思われる人がいると思いますが、過去はそうではなかったようです。今のようにインターネットが無く、情報が少ない時代には、同じ病気でも個々の医師や病院によって大きく異なる治療になることがあったようです。そのため『あの先生の薬は良く効く』とか、『あの病院は治らない』などがあったのかもしれません。今よりももっと、医師の実力が試される時代があったと思われます。現在は東京のクリニックでも、伊勢のクリニックでも同じような治療が受けられます。内服薬もクリニック独自というものは少ないです。

現代では、インターネットがあれば世界中の研究、論文をすぐに検索できます。これらの論文に基づいて作られた、各疾患についてのガイドラインというものが作成されています。そしてそのガイドライン(EBM)に沿った治療が行われます。僕の専門とする耳鼻咽喉科でも、『中耳炎』『耳鳴り』『アレルギー性鼻炎』『嚥下障害』などなど、ガイドラインが作成されています。もちろん僕も、関連するものは読んでいます。患者さんは一人一人個性があり、年齢、性別、考え方、持病、人種、宗教、生活習慣(仕事)などが違いますので全員が同じ治療はできません。しかし、基本的に当院では最初はガイドラインにそった治療をすすめています。なぜなら、それが標準治療だと考えるからです。

鼻アレルギーのガイドライン

耳鳴りガイドライン

僕は医者の中でも、科学者タイプではありません。世の中の物事や、病気がすべて科学で証明できるとは思っていませんし、科学を超越した奇跡は存在してほしいと思っています。そのため病気になったときに、健康食品、宗教、民間療法などに頼りたくなる患者さんの気持ちはわかります。僕も、子供が病気になったときは、よく神社に行って神頼みします。しかし、現代のように科学が発達した情報社会に生きているのであれば、最初は標準治療を受けていただきたいと思います。特に不幸にも癌を患った時など、まずは標準治療を考えてください。

前置きが長くなりました。1つの本を紹介したいと思います。科学に基づいたうえで(ガイドライン)、アトピーの標準治療を一般の人にもわかりやすく書いてあります。

発行 ダイヤモンド社    著者 大塚 篤司先生

『アトピー』は悩んでいる人が多い病気です。そのため、ネット上には情報があふれています。あやしい民間療法もたくさんあります。実は僕もアトピーでは悩んできました。特に子供の時は、肌が汚いということが非常にコンプレックスであったことを覚えています。今では、人間の価値が肌が汚いことなどは全く関係がないこととわかっていますが、中高生のときは見た目が非常に重要です。もう30年も前の話ですが、母親が一生懸命に調べた有名大学病院皮膚科受診や、民間療法などを試していました。母親には大変感謝していますが、当時はステロイドの副作用ばかりクローズアップされている時代で、現代の治療法とは全く違います。
アトピーのお子さんを持つお父さん、お母さんにぜひ読んでいただきたい本です。
(著者と全く面識はありません)