耳垢について。 耳鼻咽喉科やのはらクリニック(三重県伊勢市小俣町の耳鼻科病院)

みなさんこんにちは。耳鼻咽喉科やのはらクリニック院長の矢野原元です。
毎年春になると、伊勢市の三才児検診や学校検診をさせていただく機会があります。そこで、中耳炎、、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎そして扁桃肥大などの病気を見つけるわけです。その中で圧倒的に多いのが耳垢栓塞(じこうせんそく)です。要は、耳くそが詰まってる状態です。中には、耳垢が完全に耳栓になり聴力がおちている子もいます。

本来、外耳道には自浄作用(自分できれいにする作用、皮膚の力で自然に外に耳垢を排出する)があり、耳掃除は必要ないという報告もあります。しかしながら、実際の診療や検診では耳垢栓塞は頻繁にみられます。耳垢栓塞の多くは耳掃除で外耳道を傷つけたり、耳垢を外耳道内に押し込んでしまうことが原因となることが多いようです。赤ちゃんや小児は外耳道が狭く、耳垢栓塞になりやすいと言えます。このため赤ちゃんや小児の耳掃除は、見える範囲の耳垢(入口部から1センチ以内くらい)を細い綿棒で押し込まないように掻き出すように取り除くに止めるのがよいと思います。

また高齢者も、外耳道の自浄作用の低下や過去の耳疾患の後遺症などで、耳垢栓塞となっている患者さんがいます。難聴の原因が耳垢栓塞であったということはたびたび耳鼻咽喉科クリニックではみられることです。難聴で悩んでいる方が周りにいれば、耳鼻咽喉科受診をすすめてあげてください。(耳垢で無くても、補聴器についてや、難聴での身体障害者認定の適応について説明します)

乳児、小児の難聴は、言葉の発達や日常生活で不利となります。
高齢者の難聴の放置が、認知症と関係があるとの報告があります。

難聴の原因は様々です。確かに加齢性難聴をはじめ現在の医学でも『治らない難聴』も多いです。しかし、耳垢栓塞や中耳炎は『治る難聴』の代表です。『治る難聴』は早期に治すべきです。
「耳垢だけで病院受診してよいか?」と質問されることがあります。「もちろんOKです。開業医耳鼻科の大事な仕事の一つと考えてます。」暴れるお子さんや、カチカチになった耳垢を除去するのは家庭では不可能です。顕微鏡や、耳垢を柔らかくする薬などを用いて除去します。

難聴で悩んでいるご家族や、お子さんの耳の中を明るいところで覗いてみてください。何か詰まってませんか?