水色カラーの医師をめざしたい 三重県伊勢市小俣町耳鼻科病院やのはらクリニック

皆さんこんにちは。耳鼻咽喉科やのはらクリニック院長の矢野原元です。
最近、外来で患者さんと話していると『チャッピーに聞いたんですけど、先生はどう思います?』などとよく聞かれます。チャッピーとは、もちろんChatGPTのことです。実際、僕もChatGPTはよく使用しており、その正確性や実用性には疑いがありません。膨大な数の論文や、研究結果から瞬時に解答をだすのですから、『知識』という観点からは人間が勝てるはずがありません。
皆さんは『ホワイトカラーやブルーカラー』という仕事の分け方をご存知でしょうか?ホワイトカラーとは、白いワイシャツを着ることが多かった職業から名付けられました。特徴としては知識や情報を扱う仕事でパソコンやデスクワークが中心の仕事です。一方、ブルーカラーとは青い作業着を着ることが多かった職業から名付けられました。身体や手を使う仕事や現場での作業が中心の仕事をいいます。

世界で最も影響力のある経営者であろうイーロン・マスク氏は近年、ホワイトカラーはAIの影響を最も早く受けると繰り返し発言されています。AIが人間の変わりができると言うのです。AIの発達によってホワイトカラーの仕事は大きく変わる一方で、現場で手を動かすブルーカラーの仕事の価値はますます高まると言われています。
医師は、どちらかというとホワイトカラーなのでしょうか。基本的にはクーラーの効いた建物にいて、医学知識を駆使して診断し、カルテを記入して薬を処方する。時には論文を読み知識をアップデートしたり、レントゲンや採血結果から治療方針を決定する。まさにホワイトカラーの要素でしょうか。一方で視診、触診、採血、内視鏡、手術、実際に手を動かす処置(耳鼻科なら鼻血を止める、切開して膿を出す、耳や鼻を洗う、薬を患部に塗る、鼻や喉や耳の異物を取る)などはブルーカラーの要素と言えるかもしれません。
確かにAI時代には、単純な知識処理だけを行う仕事はAIに代替されると考えます。しかしそれらの仕事でも、知識・技術・コミュニケーション能力・経験を組み合わせることで、我々人間がAIに勝ると信じたいです。
医師でいえば、知識を調べること、カルテを作ること、画像データ、採血データ、検査データから治療方針をたてる。こうした仕事の多くはAIが得意になり、医師だけの強みではなくなってきました。しかし人と直接向き合い、目を見て話を聞き、直接触診し、患者さんの表情や匂い、声や体重の変化を感じ取りながら治療する仕事は、簡単にはAIにはできないと思います。中耳炎に抗生剤を処方することはAIでも簡単です。しかし、その部分を切開排膿をすることはAIには容易ではありません。
AIに負けないために、僕はホワイトカラーでもブルーカラーでもない、その両方を兼ね備えた「水色カラー」になりたいです。医師は医学の知識を学び続ける仕事である一方、実際には患者さんを診察し、処置を行い、時には手術を行います。そして何より、人と人との信頼関係が土台にあります。これからの時代、「人にしかできない処置、倫理的判断、信頼感」を提供できる医師が求められるのだと思います。
子供が生まれてからは、本当に将来のことばかり考えてしまいます。何も考えず、今を生きていた学生時代に戻りたいです。最後にチャッピーに聞いてみました『生成AIが発達すると耳鼻咽喉科医師の仕事はなくなりますか?』と。返事は医療行為には法的責任があること、身体診察や処置が必要なこと、患者さんが「人間の医師による説明と判断」を求めることからAIには完全に置き換わりにくいとの返事でした(笑)一方でAiを使わない医師は、AIを使いこなす医師に競争力で劣る可能性が高いとも書いていました。
当院ではAIに助けてもらうことは助けてもらい(例えば、問診、カルテ、予約システム、今後はAI電話対応なども考慮したい)、そのAIを使って空いた時間で僕やスタッフは患者さんと向き合う時間を増やし、より質の高い人間らしい医療を提供したいです。時代は変わっても、『ロボットよりこの先生に診てもらいたい』と患者さんに思ってもらえる魅力のある医師、人間になれるように努力していきます。暑い日が続きます、みなさん熱中症には十分気をつけてください。